ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート


ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート

ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート (MF文庫J)

なんとも感想を書きにくくさせる作品ですね。
良かったです、と書いておきます。


陰鬱さと爽やかさが混ざり合った物語でした。
序盤の烏子と真国、実祈と明海の物語には痛々しい面もあって読んでいて辛かったりもしました。
このまま、物悲しい物語となっていくのかなと思っていたら、実祈(烏子)と明海、真国の爽やかさをもったストーリーに移っていって奇妙な思いにも囚われながらも楽しむことが出来ました。
3人がお互いに影響しあうことで、それぞれ変わっていく様子が良いです。
何気ないやりとりが心に残るのですよね。


中盤はプロローグとの関連性が見えてくるので、何故プロローグにこの場面を選んだのだろうと考えたりしました。
どのような展開を経てプロローグに行き着くのか、その後のストーリーはどうなるのかと。
正直プロローグがラストとなって終わってしまうのではないかと不安に思ったりもしました。
そのため、その後の物語が続いた時には、ホッとしましたね。
問題の解決方法がちょっと過激なのでうすら暗いものが再び物語に表れたなとも思いました。
それでも、最後は爽やかさを取り戻した物語になっていたのが良かった。


最初はあまり気分の良い物語に思えなかったのですが、読後感は凄くスッキリ出来て楽しめました。
イケニエビトのインパクトはありながらも展開的には起伏に富んだというというか盛り上がるものはなかったのですが、物語に引き込まれましたね。
明海の心情描写にとくに魅かれたのかなと思ったりも。


面白かったので、せひこの著者の次の作品が読みたいです。