幻想症候群


幻想症候群

幻想症候群 (一迅社文庫 に 2-1)

まだ第1話しか読んでいないのですが、なんとなく書き留めておきたいなと思ったので。


・遥か遠くの夏
幻想症候群とやらの説明も入ったひとつめの物語(だと思う、短編集みたいな形だと勝手に想像中)ですが、読後感も爽やかに感じられて好みです。
衛とサキの交流も楽しめましたし、何と言ってもサキの飛び立つシーンが良いです。
熱い部分と爽やかな部分とが交わっていて読んでいて気分が良いです。
全体としてはこんな感じの印象なわけですが、気になったのが衛のその後の行動について。
衛はサキとの交流を通して、従妹にたいする後悔を感じたりしなかったのかなと思ったりもしたのですが、その後の行動を見る限りそうでもないような気がする。
会いに行っているという点ではそういう思いもあるのでしょうが、後悔した部分を取り戻そうとはしなかったのだろうなと。
そう考えると、衛の進路に大きく影響を与えたのはサキとなるのだろう(これは本文でも示されていることだけど)。
それは従妹に会いに行く前に決心したのだろうとは思う。
衛にとっての存在の大きさというか順位がサキに重きが変わったのだと思うし。
その場合、サキの真相を知った時はどんな気持ちだったのだろうといことを巡らせてみたり。
幻想症候群って、色々と意味深というか、なんというか。
幻想であるということと、どのようにして生まれて幻想なのか?
そもそも幻想ってなんなのだろう?
みたいな自分でも何書いているのだか訳のわからないことをふらふらと頭の中で転がしていました。
かなり気に入っているみたいです。


残りの感想は後で追記予定。
読了したので続きの感想をと。


・無限回帰エンドロール
前話と一転、暗い話で驚きました。
あまりにも雰囲気が変わったので、ちょっと戸惑ったのですが主人公たちがどんどんと追い詰められていく展開に引き込まれました。
狂気が良い感じに作品を盛り上げていたなと。
そして、なんだかんだでこの物語も良い終わり方だと思っていたら、ひっくり返されて再び驚き。
話ごとで本当に雰囲気も展開も違いすぎると思いました。
後味悪いな、とこの時点では思っちゃいましたね。


・夏休みの終わり
他のストーリーに対しても言えることなのだけど、タイトルになっている幻想症候群の絡め方が面白い。
幻想症候群がこの物語全体の根幹をなしているのに、物語の主体は現実部分になっているように思うところとか。
現実と幻想とがお互いに干渉しあっていることもわかるのに、幻想が現実部分を面白くするためのアイテム程度に感じてしまったり。
タイトルにつけるくらいだから幻想症候群というものが主体になると僕自身が思い込んでいたというのもあるのかもしれませんが。
そして、読んでいる最中この物語がいちばん強くそう思いましたね。
幻想に振り回されながらの三沢と芳川が織り成す物語が良い。
過去と現在と交互に描かれる2人の物語の雰囲気が凄く好き。
幻想症候群に関しては、ありふれた題材に感じながらもそこから生まれる現実の物語に楽しめた。
とおもっていたら、最後にこう来ますかと。
この本のタイトルが幻想症候群であることを思い知らされました。


・一〇〇〇年の森
幻想症候群の物語と言えるのですが、幻想症候群自体の存在感が薄い。
今までの物語の終章なのに、というか終章だからこそなのかな。
読み終わったからこそ、そう言えるのでしょうけど。
希望というものが失われていく物語を描きながらも、結局のところハッピーエンドで締めてくれるのが好きです。
全ての物語で爽やかさがあるのですよね。
後味悪く終わったと思っていた第2話に関しても、ここで補完されてやられました。
さりげなく幸せ補正が大分入っているのだもの。
読んでいてニヤついてしまいました。


各物語ごとに幻想症候群の使いどころが違っていて楽しむことが出来ました。
第1話、第2話とあまり複雑というか凝った使い方ではないと思いながら読んでいたら、第3話で思い知らされたりと。
それでも、複雑さといった面では面白みは少ないのかも。
この作品の面白さを言うならば、雰囲気というのが一番になってしまうのかな。
自分自身、この作品にあまりにも惹きつけられているのが不思議というか。
よく表せないけど、凄く好きです。


各話ごとの繋がりをもっと期待していた部分があったので、そこらへん無かったのが残念に思えたり。
委員会とかもっと絡んでくるものと思っていました。


書く物語とも主人公の名前がほぼ作中で出てきていないような。
感想書こうとしたら名前が出てこない出てこない、とくに『夏休みの終わり』。
カラーページの人物紹介見て知りましたよ。